世界には、共通の7つの基本の単位があります。長さ、重さ、時間、電流、温度、質量、光度です。
これらは、日常的にはあまりにも当たり前のことで、そもそもを辿る気にもなりません。
ところがこの基準を決めるというのは、とんでもなく
複雑で重要なことと知ると現在の時代性が改めて判ります。
基本7単位、その基準が狂うと物理学、工学において、
航空、宇宙、コンピュータとか、自然科学や特に実際の製造の現場では
とんでもない支障を来すという超ハイテクな時代になっているようです。
11月16日にフランス・ベルサイユの国際度量衡総会で重さの基準が130年ぶりに
見直されるということになりました。
重さは、かつて1リットルの水の質量から決めていました。
130年前に、白金とイリジウムの合金は10万年変化しない安定金属という事で1キロの分銅が
作られ、この重さを世界が統一基準としてきました。
ところが、調べてみると50マイクログラムの誤差が出ていました。その重さとは、人の指紋一個分です。でもこの誤差は、ナノテクノロジーの世界では許容されません。
そこで、素材をシリコンに替えて原子の重さから変化のない原器が作られました。
この製造技術を持つ国は、ドイツ、アメリカ、フランス、カナダそして我が日本です。
日本の茨木県つくば市の産業技術総合研究所がこの度のシリコン原器製造の決定的な役割を果たしました。またまた日本のナノテクが世界に認められた瞬間でした。
これで正確なキログラムが決まりました。
人間社会の正確さへの意欲は衰えを知りません。
長さも、地球の長さを基準にしていたものが、光が一定時間内に進む距離からメートルが決められました。
時間は、太陽の運行から導き出しましたが、今ではセシウム133という放射能物質の放射の
周期から時間が決められています。
さてNOCは、オーガニックコットンの基準を作って24年が経ちました。
オーガニックコットンという素材の純粋性に敬意を持って、飛び切り厳しい製造基準を作りました。
厳しいという意味は、製造工程中で使われる化学薬剤を徹底的に排除して、化学薬剤のない時代、70年前の製造方法に戻るという選択でした。
糸の加工工程でも生地の加工工程でも昔の方法にさかのぼって考えました。
染色するにも草木染で媒染剤も昔ながらの方法で、安全性に気を使いながら進めて行きました。
その間にオーガニック加工という新しい言葉もできました。
あれこれ会員の皆さんと一緒に工夫を凝らして、なんとかNOC加工規準ができました。
基準は一旦決めると、動かしがたく、時にはバイヤーさんの希望に添えなくて、ビジネスを逃すこともありました。
臨機応変に対応するのがビジネスの世界です。それでもあえて自分たちを縛ることになる基準ですが、それを持ってしっかりした考え方でモノづくりをしてゆくグループが一つくらいあってもいいと考えてきました。それでも時には、右か左か迷うこともありました。
そんな中で、待ったなしの苦境にあったのが、アトピーアレルギーの子供たちや化学物質過敏症の患者さん達でした。
化学物質が症状を悪化させる事がはっきりしていましたので、化学処理のない安全な衣料・繊維
素材の開発に勤しみました。
すると、NOCのオーガニックコットン製品は、安心安全の製品だということで、注目が集まり、
商品の供給をしてゆくことができました。その過程で基準を守り抜くための技術を習得し、今日に至っています。
その意味で、基準を作ってその基準を後生大事に守り続けてくることが出来たのは、NOCのメンバーの人々の共通した思いのお陰と思います。改めて基準の大切さを感じています。
平成30年11月29日
日本オーガニックコットン流通機構
顧問 宮嵜道男 (文責)