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【クジラを食べる文化 - 17/09/02】

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 先日、渋谷で「ビハインド・ザ・コーブ」というドキュメンタリー映画の上映会があって出かけ
ました。
タイトルは、「ザ・コーブ」という映画の裏側という意味で反証の映画です。
 
  200人位収容の小さいホールでしたが、満員状態でした。
この映画の監督、撮影、制作を自費で自力で成し遂げたのは、元気のいい日本の
若い女性でした。
その女性・八木景子さんは登壇して制作の苦労話、裏話を滑らかな早い口調で
語りました。
2010年3月の第82回アカデミー賞(アメリカ・ロサンゼルス)で受賞した
ドキュメンタリー映画「ザ・コーブ」は、和歌山県の太地町で古来伝統的に行われている
追い込み式イルカ漁を批判した内容で、可愛いイルカを殺すのも食べるのも残酷だから
中止せよという強い反対を表明している映画です。
 
     欧米の反捕鯨活動家は、ノルウェー人やエスキモー・イヌイット(アメリカ人)の
    人々が、平気で捕鯨を続けているのに、あえて日本の紀伊半島の小さな漁村・太地町に
    大挙してやって来て、漁民をキラー・殺戮者と呼び、ドキュメンタリー映画らしからぬ
    「演出」を凝らして映画に仕上げ、一方的に世界中に日本人の残酷さとして喧伝しました。
    暴力的にエコロジーを主張するシーシェパードが、この映画「ザ・コーブ」の裏で
    関わっていたこともよく知られています。
    興行的には、大成功で大きな収入を得たことは言うに及びません。

     この大ヒット映画に、「異議あり!」を、同じドキュメンタリー映画という土俵で
    表明したのが八木景子さんです。
    資金も時間も全て自腹、家庭用のビデオカメラで自ら撮影し、インタビューし、
    編集しました。   
    映像技術はほとんど素人、そんな映画が2015年カナダ・モントリオールの国際映画祭
    で正式上映されるという快挙を果たしたのです。
    
     世界的な反捕鯨運動に対して日本の立場や正当性について、政府もマスコミも反証せず、
    首を引っ込めて、風の収まるのをただ待つという態度に終始してきました。
    南京事件も慰安婦問題も明確に反証をしないから、次から次へと反日映画が制作される
    ことになっています。政府は、映画の刷り込みの力を過小評価しています。
    黙っていれば、その疑惑を認めたことになるというのが世界の常識です。
    その意味でも、この映画の価値は高いと言えます。

     日本人は、縄文、弥生の古代からクジラを食料としてきました。12世紀の室町時代
    には捕鯨技術が発達し、1606年には、「太地」で組織的な捕鯨が行われるように
    なりました。
    日本人はクジラを捕ると、皮から身、骨、油、ヒゲまで活用して、自然の恵として
    クジラの命を供養する文化を培ってきました。
    第二次世界大戦後の食糧難の時代は、捕鯨船が遠く南氷洋まで行ってクジラを捕獲して、
    当時の重要な動物性蛋白質の栄養源になりました。私も小学生の育ち盛りの頃、学校給食で
    クジラの竜田揚げでお世話になりました。

     1712年頃から、アメリカをはじめ欧州諸国が競争で捕鯨を本格化させてゆきました。
    ところが目的は皮や、油で、有り難味もなく不要な身の部分は捨てていました。

     1853年にアメリカからペリー艦隊が浦賀に来航して、鎖国日本の開国を迫ったのも、
    捕鯨の際の寄港地が必要だったからでした。クジラの油は灯火の燃料でした。
    かの有名な漁師ジョン万次郎も難破して漂流しているところをアメリカの捕鯨船に助けられ
    アメリカに渡ったのでした。
    それ程、盛んに捕獲していたクジラですが、1859年に石油が発見され、燃料として
    使われ始めると石油と比べても、鯨油は採算に合わず縮小してゆき、1940年には
    捕鯨を中止しました。

     1948年には、欧米各国がクジラの乱獲で絶滅の恐れが出てきて、捕獲の制限のため
    の国際組織をイギリスで設立しました。それが、IWC国際捕鯨委員会です。
    世界に捕鯨の制限を呼びかけましたが、1970年になるまで加盟したのはわずか
    17カ国に過ぎませんでした。(現在は80カ国以上)
     多くの国は、クジラ、イルカを重要な海洋資源として位置付けていたのでした。
    
     アメリカにとって1970年代は、ベトナム戦争が泥沼化して有毒催奇性のある枯葉剤の
    散布をはじめ、国際世論の激しい批判を浴びていました。
    そこでニクソン大統領は、その汚名をかわすため、クジラ、イルカの保護を政策として打ち
    出し、大々的な喧伝作戦を始め、世界の世論誘導を行いました。
    
     テレビドラマやハリウッド映画で、盛んにイルカやクジラを主人公にして、親しみを
    植え付けました。
    私も子供の頃「わんぱくフリッパー」というイルカと少年の物語のテレビドラマに夢中で、
    イルカは賢く、愛らしく「特別な動物」として刷り込まれました。
    また多くの環境保護団体を動かし、捕鯨禁止運動に仕立て上げて行ったのです。
     クジラ、イルカの保護運動は、映画スターや人気歌手も手伝って、共感されやすく
    寄付金が潤沢に得られるのです。
    
     現在、クジラは84種類中、シロナガスクジラなど数種以外は、絶滅の心配ない頭数に
    回復しています。

     地球環境を考える上で、生物多様性は特に重要で、産業革命以降、地球上の生物の絶滅は
    急速に進んできています。一つの生物種が消滅するとその生物に依存してきた多くの生物が
    絶滅してゆくという連鎖が起こります。そしてやがて捕食の頂点に立つ人類も絶滅に向かう
    ということになります。
     クジラもかつてのような乱獲が起きないように管理しながら捕鯨を続けてゆくことは、
    海洋資源の活用の観点から理にかなっています。

     世界には、多くの環境保護運動の組織がありますが、気をつけなくてはならないのは、
    ある意図を隠して地球環境保護運動の仮面を被っている組織です。
    地球温暖化を抑えるためとして二酸化炭素の排出権を売買できる仕組みを作ったり、原子力
    発電は二酸化炭素の排出量が少ないから有効な発電方式だと主張したりするものです。
    この「ビハインド・ザ・コープ」の映画で判ることは、反捕鯨運動はそのような隠れた
    意図を持った運動組織の一つに数えられるものだということです。

     NOCの活動の中心テーマは、地球環境の保全ということになります。
    良い環境を改善・維持して次の世代に渡してゆくということから、まず大気、海洋、土壌
    の汚染をなくす運動です。そして生物種が絶滅することなく、豊かに維持されるように
    することです。
     ただし、環境運動だからと言って、闇雲に他の運動組織と同調する必要はありません。
    常に広い視野に立って、整合性のある判断をしなければなりません。
     環境リテラシーをしっかりと持つようにしてゆきましょう。


    平成29年4月26日                  
   特定非営利活動法人 
日本オ−ガニックコットン流通機構
顧問  宮嵜 道男(文責)


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